ブラジル生まれのTony Kanaan(トニー・カナーン)は、モータースポーツの分野において限られた人間だけがもつ闘争心と野望を備えた典型と言える。彼は最初にブラジルのカートレースで経験を積み、プロとしてのキャリアは1994年に始まった。"TK"(ピット内や友人からはそう呼ばれているニックネーム)はすぐにこのスポーツのトップに登り詰め、この12年間で、CARTシリーズから現在のインディ・カー・シリーズに至るまで、トップドライバーとしての地位を確立してきた。

2013年はTKの当たり年であり、インディ500での500マイルレースにおいてトップでゴールするという、念願の夢をついに実現させた。2004年インディ・カー・チャンピオンシップから約10年が経過し、インディ500への参加は12回目となる。彼が過去12年間もの間、常に優勝間近であった事実を考えれば、この因縁とも言えるトラックでの彼の勝利は遅すぎたと言えるだろう。この歴史的なインディ500で勝利し、David Lettermanショーに出演した際、彼はこう語った。「200ラップのインディ500において、過去12回中、234ラップでラップリーダーとなったそして今年遂に優勝に至った!」彼が費やした時間と努力が2013年インディ500の勝利をより喜ばしいものにしたのは間違いない。彼がインディアナポリス・モーター・スピードウェイのチェッカーフラグを手に取ると、観客はスタンディングオベーションで彼を迎えた。遂にTKは、かの有名なミルクボトルで勝利の乾杯をあげたのである。

曲がりくねったロードコースよりオーバルコースのスーパースピードウェイの方が好きですかと質問を受けた彼は、現在のように2タイプのコースが含まれている方を好んでおり、両方とも自分にとってチャレンジだと語った。「楕円コースはメンタル上の集中力が要求されるのに対して、ロードコースはよりフィジカルなスキルが必要である。」彼によれば知性的な性質を持ちブレーキをほとんど使わないオーバルコーのサーキットで勝つには、マシーンセットアップとレースストラテジーの両方における正確性が必要になる。ロードコースでは、トラクション、スピード、燃費にとってかわり、コース上でライバルをパスするにはアグレッシブなドライビングやレイトブーキングなど力強いスキルで少ないスペースを利用する必要がある。

TKは、世界的な名声にもかかわらず、トラックの外の彼は実に親しみの持てる男である。インディ・カー・スポーツがこのようなアンバサダーを持てたことは幸運なことだと思う。「彼はいつもファンにやさしく、パドック内のトラックやガレージエリアにいる時でも、ファンに挨拶したり、サインをしたり、写真のポーズを取ってくれるのです。そうした身近で親切な振る舞いが、彼と一緒に仕事をしたいと思う大きな理由の1つです」とLuminoxのBar¬ry Cohenは語る。私がトニーに、プロのレーサーでなかったら何をしていたかと尋ねると、彼は一瞬考え込んでから、警察官か探偵か、もしかしたらFBI捜査官になって仕事を楽しんでいたかもしれないと話してくれた。車でも、足でも、彼から逃げきれる犯罪者はそう多くはないだろう。

トニー・カナーンは、将来の目標について、は躊躇なく答えた。「私はもう一度インディ500で勝つ」と。


プロフィール
TONNY KANAAN(トニー・カナーン)
tonyprofile.jpgブラジル・バイーア州サルヴァドール出身のカーレースドライバー。8歳の時にカートを始め、1985年に最初の選手権に参加し、1990年にカートを卒業するまでサンパウロ州選手権で各クラス合わせて8回に渡りチャンピオンを獲得。ブラジル全国選手権でもチャンピオンに輝くという実績を残した。アメリカ合衆国のオープンホイールレースで活躍しており、CART、IRLというアメリカの二つのオープンホイール選手権の双方でレース優勝の経験がある数少ないドライバーの一人でもある。2004年のインディ・レーシング・リーグ(IRL)チャンピオンである。