テストパイロットであり、民間宇宙旅行を提供するSXC社を立ち上げた起業家。そして宇宙船が完成したあかつきには宇宙飛行士にもなるHarry van Hulten(ハリー・ファン・ハルテン)は、宇宙飛行士として人々を宇宙へ連れ出すという大胆不敵な考えを持っていながら、どうしてこんなに地に足のついた人間でいられるのだろうか?彼の人生を解き明かすインタビュー2回目(全4回)をお届けする。

初フライトの日に向けて、Lynx II(リンクス:スペースシップの名称)とF-16では空中でどんな違いがあるでしょうか?

4,000から5,000フィートくらいまでは同じだろうと思っています。そのくらいの高さまでは、特別な装備がなくてF-16で行けますから。ただそれ以降は、驚異的になってくるでしょうね。F-16でできることとは、性能が1 桁違いますから。すべての室内備品を捨ててできるだけ軽くすれば、F-16の推力重量比は1を超えます。これは、垂直に加速できることを意味します。これは、すごい感覚です。Lynxは離陸からそれをやることができ、2.8という信じられない推力重量比を持っています。運が良ければ、F-16でマッハ2.05で行くかもしれません。Lynxはマッハ2.9まで一気に上昇します。ですから、かなり違ってくると思います。もちろん大気圏外での任務は、まったく新しい経験です。宇宙で宇宙船を操縦するために12の小さなロケット制御スラスターがありますが、それは私にとってまったく未知の領域です。大気圏への再突入も私にとっては初めてです。再突入では4 Gまで行くでしょう。
かなりの数字に思えますが、F-16で毎日のように9Gを経験しているので、それと比べれば軽いものです。その後は、帰還のための長い滑空となるでしょう。

4Gというのは、どのような感覚なのでしょうか?

それほど悪くないですよ。それには、多少の運動が必要でしょうね。自分の筋肉を緊張させて、特定のリズムで呼吸をしなければなりません。それほど難しいテクニックではありませんが、4Gが30秒間続くのはいくらかタフかもしれません。そのために遠心分離器での経験やL-39でのフライトが訓練に事前に組み入れられているのです。

乗客は、まずどのような訓練を受ける必要がありますか?

2 人だけですし、かなり高性能の宇宙船に乗るので、十分にコミュニケーションを行うことがとても大切です。宇宙服を着用し、インターコムを使って会話します。ヘルメットにマイクとイヤホンが内蔵されています。慣れるまでにはちょっと時間がかかりますが、迅速に行う手順がいくつかありますので、明瞭である必要があります。たとえば、「大丈夫ですか?」ときかれたら、「はい」または「いいえ」で答える必要があります。「ええ、まあ、OKですが、何と言うか・・・」といった曖昧なことではいけません。マッハ3になるのですから、答えは迅速かつ明瞭でなければなりません。
他にも事前のトレーニングとして、特殊構造の飛行機に1時間乗るという1日~2日のプログラムを提供します。これは、ゼロGの放物線を、1フライト当たり15分程度飛行するというもので、ここで微重力とはどんなものか、微重力環境でどのように自分をコントロールすればよいかを教えます。

スペースフライトで人生は本当に変わるでしょうか?

ちょうど500名の認定宇宙飛行士がいますが、宇宙に行った人の大半は、帰還して、母なる地球のアンバサダー(大使)になっています。宇宙まで行くと、地球がどんなに脆く尊いものであるかがはっきりとわかります。そしてその後、切迫感が生まれて、日々直面している比較的小さな問題は全て後回しにし、環境維持や持続可能性といった重要な問題に取り組もうと思うのです。

プロフィール
Harry van Hulten(ハリー・ファン・ハルテン)

harryprofile.jpgオランダの航空探索・旅行会社 SXCの創始者で現COO。オランダのブレタ王立防衛大学にて工学の学士を修了した後、テストパイロットとして高性能戦闘機を含む42種類の航空機をの操縦し、総計3,000時間(うち2,600時間はF-16の操縦)以上のフライトの経験を積んでいる。EURO・NATO共同ジェットパイロットトレーニングとF-16ウェポン・インストラクター・コースを修了した後は、NASAのおアイロットの独占的な準備プログラムであるUSAテストパイロットスクールのテストパイロットに従事していた。